勉強もそうだが、頭を使う作業は、あまりたっぷり時間があってはいけない。例えば、日曜日。そのつもりになれば、一日中勉強ができる。あれもこれもと欲張った計画を立てるが、その通りに行ったためしがない。ひどいときには半分もできないことがある。時間がある、と気を許すのがいけないらしい。入口で道草を食って、取り掛かりが遅れたりするのである。 文章を練るのに最も適したところは、馬上、枕上、厠上である。そういったのは中国の昔、欧陽脩という人である。馬上は、今風ならば乗り物の中になろう。枕上は床に入っている状態で、これには今も昔もない。同じ厠上はトイレの中にある。面白いのは、机に向かって文章を考えるのではないことである。こういう、やや不自由な状況に置かれたときに、そして思うようにならないところで、頭が良く働く。良い考えが浮かぶ。そういう経験律を述べたのか、この馬上、枕上、厠上で、古来「三上」としてよく知られている。 場違いのところが良いのである。拘束されて自由にならない状態が好ましい。あまり良い条件ではない環境において、かえって頭は活発に働くのを発見したのである。 河の流れは、皮幅が狭くなったところでは激しく速く流れる。広くなると、急湍を忘れたかのように、悠々と流れていく。制約が加わると、エネルギーが高まるのは、知的活動においても変わりがない。
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